第31回 観光庁長官 溝畑宏



観光庁の溝畑宏長官は、観光客誘致のターゲットは欧州よりもアジア、特に中国がメインであると明言する。 7月1日の中国人向け個人観光ビザの取得容易化が話題となり、中国人観光客数は確実に伸びている。また、今年中には、試験的に日系旅行会社が中国人向けの訪日旅行を販売できるようになるという。これは大きな変化であり、観光立国を目指す日本としては強い追い風だ。中国に対して日本への旅行をどうアピールしていくのか。その方策を溝畑長官に余すところなく聞いた。



観光誘致のターゲットは中国

――7月1日の中国人向け個人観光ビザの取得容易化以降、訪日旅行の状況はどうなっていますか?


まず個人ビザの発給の件数は、7月の1営業日当たりがその前の月の6月と比べて2倍強、前年の7月との比較では約6倍強で、ビザ発給は非常に順調に進んでいます。訪日中国人旅行者の数も7月は16万5000人と過去最高の数字となりまして、8月も最終的に発表は下旬になりますけれども、おそらくそれと同程度かあるいはこれを上回るぐらいの勢いです。極めて高い水準を保っているといえます。 また、8月の日中韓観光大臣会合におきまして感じたことは、個人ビザの取得容易化には日本に対する興味を深めるアナウンスメント効果があったのではないかということです。



 

日系旅行会社が中国で訪日旅行が販売可能に

――前原大臣が日中韓観光大臣会合に行かれ、そこで何か感じたことはありますか?


まず一つ目のポイントは、日中韓観光大臣会合で、2010年の1700万人の3国間の交流、これはほぼ確実に達成できるであろうという共通認識が示されたことと、その上で2015年に3国間で2600万人、これを目標にさらに交流を深めていこうという目標を立てたことです。日中韓で観光を考える場合に、「競争」をイメージされることが多いですが、ここでは共存共栄が強調されたことに非常に意味があったのではないかと思います。それからもう一つのポイントは、アウトバンドです。現在のところ、中国国内における日系旅行法人のアウトバンド営業は禁止されているのですが、これについて旅行商品をPRしたり、直接販売したりできるよう、試験的な措置として、できれば年内に実施すると、国家旅遊局長から説明していただきました。こういう形で規制が緩和されてゆけば、中国から日本に向けての観光客の増加、そして中国の皆さまに日本の本当に素晴らしい観光商品も提供できるようになります。年内に一部解禁というような方向性が出たことはたいへん意義深かったと感じております。



訪日観光客獲得の目標

――中国人の訪日に関して、年内の目標はありますか?


昨年が101万で、我々の今年の目標は最低150万人、最高180万人です。7月までで約87万人で、7月単月でも16万5000まで増えましたから、150万ペースではあります。150万はかなり高い確率でクリアすると思います。ですが180万人にとなると、かなりペースを上げなければなりません。1カ月18万人です。とはいえ、それぐらいの高い目標は達成したいと思っています。

 


――ビジット・ジャパン・キャンペーンで、外国人の訪日という大きなくくりがありますが、2010年までの外国人訪日目標1000万人は達成できそうですか?


昨年は679万まで落ち込んで、2013年までに1300万、2010年については出来る限り1000万を目標に頑張ろうということですが、現実問題としては今7月までで508万人、あと500万を割る5でいくと毎月100万なので厳しい状況です。ただ、少なくとも2007年と2008年の835万は絶対に抜き、できれば1000万近くに持っていきたいと考えています。


 

クルージングに注目

――今後のプロモーション活動に関してはどう考えていますか?


中国についてはプロモーション予算を大幅に増やしまして、秋から冬に掛けて、広告のキャンペーンを計画しております。20代から30、50代まで、きっちりとマーケット調査を行なった上で、効果的なPRをやるということです。今回、観光立国ナビゲーターに、日本で今最も人気があり、アジアでも人気がある「嵐」を起用し、積極的にPRしていこうと考えています。ですからPRに関しては、質と量ともに、例年になく大々的にやります。二つ目には、各自治体がビザ取得容易化を受けて、積極的に中国を中心にインバウンドに力を入れていまして、自治体でも個別にPRが行なわれるのではないかと思っております。 また中国に進出した企業、たとえば資生堂やローソンなどともタイアップしていきたいと考えています。中国でそれらの商品を買った方が、日本へ行きたいと思っていただけるようにしたいのです。 今回、銀聯カードと協力に関する覚書を結び、2011年の旧正月までに「日本旅行カード」を作ることになりました。「日本旅行カード」を日本国内で使用した場合に獲得できるポイントを増やすことで、日本に来てもらおうというです。 プリンスホテルはホテル全館に中国語放送を導入していただきましたし、東横インも一生懸命中国語放送を導入しようと努力しています。このように民間で中国人の受け入れ体制を整えようという動きが出てきています。そういう意味では、この夏を境に受け入れ体制が強化されてきたといえるでしょう。また、九州を中心にクルージング船で中国からやってくる観光客の方々が増えてきています。法務省や地元の地方自治体と連携をとりながら、できるだけスムーズに入国できるようにしたり、クルージング船でのホスピタリティーを高めようとしています。ありとあらゆる方法を駆使して、中国からの観光客の皆様に対する受け入れ体制を強化するということです。


――中国からクルージング船で韓国に行きショッピングして、韓国から日本に来てまたショッピングというようなツアーに関しては聞いたことがあります。買い物以外にもいろいろ見て欲しいという希望はありますか?


そうですね。ただ、時間に制限があります。何日か港に停泊してくれればいいのですが、大体は1泊停泊するか、朝日本に着いて夕方までということが多いです。ですから、ショッピングと簡単なレジャー、そして視察ぐらいでしょう。ですが1回でも来ていただいて満足していただければ、リピーターになりますから、クルージング船のホスピタリティーを強化していきたいと考えています。



溝畑宏 (みぞはた・ひろし)

(昭和35年8月7日生)

出身地 京都府



昭和 60. 3   東京大学法学部卒業

昭和 60. 4   自治省に入る

   60. 7   北海道庁地方課・財政課

   63. 5   自治省財政局準公営企業室

平成  元. 7   〃  〃  公営企業第一課企画係長

    2. 4   大分県企画総室企画調整課主幹

    3. 5   〃  〃  文化振興室長

    5. 4   〃  総務部財政課長

    7. 5   〃  企画総室参事兼文化振興課長

   10. 4   大分県企画部次長

   11. 5   自治省行政局行政体制整備室課長補佐・理事官

   12. 4   大分県文化部参事

           2002年ワールドカップ組織委員会実行委員

           株式会社大分フットボールクラブ取締役ゼネラルマネージャー

   14. 4   大分県企画文化部長

   16. 4   大分県参事

       8   株式会社大分フットボールクラブ代表取締役


   21.12   〃              〃    辞任

   22. 1   観光庁長官



 


インタビュアー:『月刊中国NEWS』 編集長 張一帆


『月刊中国NEWS』 10年11月号掲載