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第38回 環境大臣兼内閣府・防災担当大臣 松本龍



3月11日、東日本大震災が発生し、その地震と津波で大きな被害が出た。それにともない、福島第1原発では大きな事故が起こり、その環境に与える影響も計り知れない状況だ。そんな中、4月26日、今動向が注目される環境と防災の責任者である環境大臣兼内閣府・防災担当大臣の松本龍大臣に、環境と防災の観点からお話をうかがった。また、同時に日中の環境における取り組みについても聞いた。


東日本大震災に対する認識と過去の震災から活かされた教訓

――今回の東日本大震災の被害状況をどうとらえますか?


今回の東日本大震災は農村や漁村でかなり被害が出ています。また、町全域が大きな被害を受け、中心機関である町役場が機能しなくなるなどしたのです。町長が亡くなるケースもあり、大変でした。つまりは、我々もそういったことに対応していける危機管理をしなければならないということであり、道路が寸断され、電気やガス・水道が止まり、物資もなかなか運べなかった、ということがありますから、そういうことも含めて、この震災に学んでいかなければならないのです。


――松本大臣は環境大臣就任当時から防災担当大臣を兼務していらっしゃいますが、今回、 東日本大震災では特にどのようなことが重要であると感じましたか?


歴史的に見れば、津波の被害は堤防をつくれば防げるという考え方があり、堤防は一定の役割を果たしていました。しかし、津波の際に重要なのは、やはり逃げることです。素早く津波情報をキャッチして、すぐに高いところに逃げるということが大切になります。

私は被災地に行き、素早く高台に逃げることが可能になるような町づくりが必要であると、痛感しています。


――中国でも近年、大きな地震が多く起こっています。防災の面から見て学ぶ面はありましたか?また実際にそこから学んだもので、今回の東日本大震災で生かされた部分はありますか?


今回の東日本大震災はマグニチュード9・0という地震であり、被害の多くは津波によるものです。死因の92%が水死という状態で、16年前の阪神・淡路大震災では多くの方が建物の倒壊により亡くなったこととはかなり異なります。3年前に四川大地震があり、その時私たちもいろいろ学びました。中国では四川大地震の被災地を支援する省などを指定する「対口支援」が行なわれました。東日本大震災においても、たとえば、関西広域連合が調整役となって、被害の大きな3県に対し、パートナーを決めています。このような対応は、四川大地震から学んでいるのです。そういう意味では、阪神・淡路大震災から復興のノウハウを四川が学び、今度は四川地震から我々が学んだのです。さまざまな大きな地震を契機として、それを検証してゆくことによって、次へとつなげていくのです。人類は災害という共通の課題をかかえています。だからこそ、お互い学びながら対処していく必要があると思うのです。


福島第1原発の今後と環境問題の解決

――福島第1原発からもれる放射線の影響をどう考えますか?


 放射線による影響は量と時間が重要ですから、避難地域では1年間続けて現在の放射線量を浴びるようなことがあれば健康に影響を及ぼす可能性を否定できないため計画的に避難させているのであり、安全側に立ってやっているのです。実際、(福島第1原発周辺以外の場所は)統計学的に見て人体に影響を及ぼす状況ではありません。観光の問題でも、中国の方も韓国の方も日本を避けている状況がありますが、ぜひ日本に来て日本の良いところを見ていただきたいのです。


私自身、福島に行きましたが第1原発近辺以外は環境に影響が生じるレベルではありません。放射能の影響を正しく評価していくため原発近辺も文部科学省を中心に総力を挙げてモニタリングを実施しています。


――今回、津波で福島第1原発が大きな影響を受けています。放射性物質を効果的に取り除く方法はありますか?


これにはいろいろな方法があります。例えば、農地にたまった放射能はナタネやヒマワリを植えれば根が放射性物質を吸い上げる効果があるため、除去が期待されるといわれています。素朴な方法ですが、原子力発電・放射線防護に優れた知見を持つフランスのアレバも同じことを言っています。その他にも世界にはいろんな知恵がありますので、それらを取り入れながら放射性物質の影響を低く低減させていきます。 

  

環境問題は各国との連携を重視する

――日本の環境技術は高いレベルを誇りますが、世界の国々に対し、どのようにアピールしていくつもりですか?


日本の環境技術はグリーンイノベーションといいまして新成長戦略の一番の課題となっております。現在、中国がものすごい勢いで発展していますが、日本もかつて公害問題を起こしました。50年前からそういうことがあり深刻になってそれに対処する技術を学び克服してきたのです。水・大気・土壌の問題に関する知見と技術は、日本が世界で一番であると思いますので、中国を中心としたアジア諸国に技術協力していきたいと考えています。


――日本と中国で環境問題を語る際、やはりギャップはありますか?


ギャップはあるでしょう。ですが、中国も第12次5カ年計画で環境問題を真剣にとらえていますから、私もそれを評価したいと思います。環境の問題はそれぞれの国で地球温暖化対策を実施し、CO2の排出量を少なくしていかなくてはなりません。これを我々はどんどん進めていきたいと思います。京都議定書のような問題で言えば、先進国に法的拘束力のある規制がかかっていますが、中国の方々にもそういう問題に積極的に取り組んでいただきたいと考えています。地球という船にみんな乗っているわけですから、地球という船がダメにならないよう、我々も努力をしますし、中国のみなさんにも努力をしていただきたいのです。


 


インタビュアー:『月刊中国NEWS』 編集長 張一帆


『月刊中国NEWS』 11年07月号掲載

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