第18回 JUKI会長 山岡建夫


1990年6月に上海重機ミシン有限公司を設立し、中国に拠点を持ったJUKI株式会社は、世界シェア・ナンバーワンの工業用ミシンメーカーである。「世界の工場」としての中国にいち早く進出し、中国の経済・ファッション業界に精通するJUKI。当社の山岡会長は、中国の生産性を高く評価し、また中国は他の国よりも早く金融危機を乗り越えると予測する。


今後の中国アパレル業界の構造や展望を含め、気になる中国の動向を山岡会長が余すところなく語る。



日本アパレル輸入品の92%をしめる中国


――中国でのJUKI工業用ミシンの生産量はどれくらいですか?


今、生産数量では70%を中国で作っていて、日本で作っているのは30%です。数が多いものは中国で

作り、数が少ないものは日本で作っています。そして中国で生産したものも海外に輸出しています。


(製造拠点は)北京と天津の間にある廊坊(河北省)と上海にあります。また、部品を中国で調達し日本へ運んで日本で組み立てたり、もしくは中国で組み立てたりています。寧波には中国で部品を調達し、ユニットに組んでいる工場があります。


――中国での売上は全体の何%ですか?


工業ミシンは全体の35%、チップマウンタ(回路基盤に電子部品を搭載させる機械)という産業装置が40%、全体ですと、全社の27%ぐらいの売上を占めています。


――中国での売り上げはどのくらいで、全体の何パーセント程度でしょうか?


南通の工場がまだ稼動していませんので中国での売り上げはまだまだ小さいですが将来は中国を中心に、海外売上高比率を現在の2倍の20%以上にすることを目標にしています。



中国の驚くべき変化


――1990年の中国初進出当時と今とで、中国の状況に変化はありますか?あるとすればそれはどのようなものですか?



当社は、中国に製造で進出する前から中国向けの製品輸出業務を長年しており、中国の技術研修生も随分日本に来ていました。衣料消費に関しては訪問する度に大きく変わっています。具体的には、まず、1992年に呉文英・紡織工業大臣(中国紡績工業部長)にお目にかかった際、中国政府の計画では、人口1人当たり衣料品を年間3枚消費する、これを毎年いきわたるようにすることだとおっしゃっていました。それでも人口が11.5億人くらいですから、三十数億枚必要となりますので、私はその数の多いことに大変驚いたものです。


2005年の業界推計によると、背広1・シャツ1・下着1というように点数で数えた場合、年間全世界で作られている衣料品は約800億点で、中国はその約70%、550億点ということでした。その中で、内需向けは300億点、250億点が中国から全世界に輸出されていると言われております。


1992年の頃と比較すると、中国の内需がものすごく増えていることが分かります。


それから、これは中国に限りませんが、アパレルのトレンドが現在は写真やテレビなどで全世界同時に色彩豊かに映し出されますから、その影響も大きいです。例えば昨年北京オリンピックが開かれましたが、観客がどんな格好をしているか、運動選手がどの様なスポーツウエアを着ているかを見て、「あれが欲しい」ということになるのです。全世界同時に欲しいとなった時に大量に作れる国は中国しかありません。


――中国進出当時から比べれば人件費は上がっていると思いますが、影響はありますか?


世界のアパレル業界は中国に進出する際は、人件費が安かったので、生産性や効率というのをあまり考えずに進めてきました。ところが、去年の1月1日から新しい労働契約法が施行され、年金等も含めると人件費が35~36%上がることとなったので、製造業は苦しくなっているのです。その上、少なくても250億点の衣料品が中国から全世界に輸出されているのですから、元高も重なって、とても大変でした。

そこで最近では、中国でも生産性を上げていくことを熱心に取り組むようになっています。確実に生産性が上がる機械の導入を中国の工場でも検討するようになりましたし、当社もその要求に合ったミシンをご紹介させていただいています。また、JUKIのコンサルタントの部門では、工業用ミシンのアタッチメント(縫製冶具)の作り方まで指導し、お客様の生産性の向上にお役に立った活動をしているので、中国の人件費の問題も解決されると考えています。


ちなみに日本化学繊維協会が調査を行ない、今年5月中国・インドの縫製工場を比較した資料を発表しましたが、アパレル製品を中国の工場ではオペレーター1人当たり1日20着作るのに対し、インドでは1人当たり1日4、5着しか作れないようです。設備が違うということもありますが、中国は分業生産体制をとりラインで流していますが、インドの多くの工場では1人ですべての工程を行なうので、効率が悪く、同じ人数いたとしても出来上がる枚数に大きな差があるのではないかと思われます。



「中国での売上は年間約10%伸びています」


――中国でも商品を販売していますか?また、中国での売上高は伸びていますか?


当社は中国で製造も販売もしており、売上は年間約10%伸びています。進出してから今までトラブルも特になく、順調にきています。工業用ミシンの他メーカーは限られた機種しか作ってない会社が多いのですが、当社は様々な縫製工程に対応する機種を作っており、「JUKIだったら何でもそろう」と言われております。背広上下縫製には約50機種のミシンが使用されます。中国では家庭用ミシンはあまり売れていません。国産でずいぶん良いミシンが出ているからです。中国は工業用ミシンがメインになります。


家庭用ミシンというのは、通常縫う速度は1分間で約650針の速さですが、工業用ミシンですと速いものでは、1分間8,500針の速さです(1秒に140針の高速)。


当社は家庭用ミシンからスタートしましたが、家庭用ミシンのメーカーが多すぎて競争が激しかったため、1953年により難しい技術を必要とする工業用ミシンメインを主に開発製造していくことにしました。工業用ミシンの売上は全体の50~55%で、チップマウンタ・産業装置は30~35%です。


――中国のアパレル業界をどう見ますか?



中国のアパレル業界は、急速に発展していますし、加工・デザインの面でも世界で一流といわれています。ちなみに日本で流通しているアパレル製品の94%は輸入品です。日本で作られているのはわずか6%になります。当社の工業ミシンの日本国内の売上は数量で全体の1%ほどなのです。その日本に流通している94%の輸入品のうち、92%は中国で作られたものです。それだけ良い品質のものが中国で作られているといえます。




期待の中国ブランド


――世界に通用するファッションブランドはありますか?


中国のブランドで国際的に流通しているところは現在ないと思います。日本のブランドも国際的に流通しているものはありません。国際的に流通しているブランドというのは、アメリカと欧州のブランドが多いのが実情です。ただ、生産場所は明らかに中国やアジア(トルコから日本までを含む)に集中しています。特に世界マーケットに供給している商品はアジアに集まっています。アメリカ、ヨーロッパの有名なカジュアルブランドで、婦人物ですとGAP、ZARAやH&Mがありますが、ほとんど自国では作られておらず、中国をはじめアジアの国で生産されています。


繊維・アパレル産業に関しては、中国はすでに世界第1位で、綿、絹の様な素材から布を作る技術も、染める技術も、編む技術、カッティングして縫う技術も持っています。世界的に通用するブランドはまだありませんが、婦人服ではその可能性があると思う会社が2社あります。


一つは浙江省にあるHEMPEL社(漢帛)という婦人服で、世界一の工場と言われている企業です。

私はJUKIに入社して以来40年以上にわたり、世界各地の大手縫製工場を訪問して来ました。世界的に見ても婦人服の製造に関しては、浙江省にあるHEMPEL社が世界一だと思っています。そこが自社ブランドもいくつか立ち上げているので、私は可能性があるのはここだと思っています。私たちの製品も随分使っていただいています。 


それからもう一つは、広東省にあるYISHION社(以純)です。婦人服で若い女性向けのものを始めて、それから紳士もの、子供服と展開していき、中国国内で非常に伸びていますし、海外の展開はまだしていませんが、その力を持っている会社だと思っております。


また、中国で最大の紳士アパレル会社はYOUNGOR社(雅戈爾)ですが、杭州湾海上大橋にも出資しており、単一工場では世界最大の規模でもあります。





インタビュアー:『月刊中国NEWS』 編集長 張一帆


『月刊中国NEWS』 09年8月号掲載