三井住友銀行頭取 奥正之



日本3大メガバンクの一つである三井住友銀行は、19の海外支店のうち6カ所が中国であり、中国かける比重も大きい。また、メガバンクの一角を担う存在として、今回の金融危機による日本の銀行への影響や、米金融機関買収のチャンスなど、今回の日本における金融危機の影響にも詳しい。そこで、中国不動産市場の見通しや、中国経済の今後、中国が持つ「アジアの金融センター」などの話題を加え、幅広い角度から日本と中国の金融について奥頭取に話を聞いた。


「頭取」の意味


――「頭取」は銀行でしか使われない面白い肩書きだと思います。何か特別な意味がありますか?

これはよく言われるのですが、「頭取」というのは「音頭を取る人」、ですから「音の初めを取る人」です。本では、雅楽という舞があります。伝統的な雅楽というのは、いろんな衣装をつけ、ゆっくりと踊る。その雅楽の音の頭を取る人、というところから「頭取」と言っていました。そこから、歌舞伎や相撲などでまとめ役のことを「頭取」と呼ぶようになったのです。そういった意味で、何か物事を始める時に「ワー」とやるのも音頭とりです。首や頭を取るのではありません(笑)。最近は、特にリスクが大きいですから、「頭取って珍しい名前ですね。頭取は首取られるためにやるのか?」と冗談を言われます。ですが、銀行でも「社長」と呼んでいる銀行もあります。例えば、住友信託は「社長」です。そして、旧三井銀行も「社長」でした。そういうのはあるものの、「頭取」というと銀行のトップだってことがすぐ分かるので、皆「頭取」と呼んでいます。


北京支店開設が遅れた理由


――北京は中国の首都です。支店の開設が遅れたと思いますが、なぜでしょうか?


もちろん我々が一番初めに作りたかったのは北京です。ですが遅くなってしまった。何十年も前の話ですが、北京に2行しか二つしか開くことができなかったのです。それで、それの中に入れなかった。ところが、その後枠があってなかなか入参入できませんでした。その間に我々が一番につくったのが広州の2支店です。その後、上海に開き、それから天津につくり、杭州・蘇州と広げて、最後にそろそろいいだろうということでやっと北京に開設できました。これは、長い間一番のプライオリティーでやってきたことです。それでも、なかなか開かせて頂けなかった。



――大変な苦労をされましたね。



でも、待つしかありませんでした。広州には前から支店がありますが、それが中国の成長とともに、自動車産業における中国のデトロイトになっていくのだと思っています。天津も自動車産業を中心に成長していますね。これら重要な場所には支店を開いています。ですので、ビジネスとして影響がないとは言いませんが、しっかりと日本の企業や、日中の合弁企業をサポートできたと思いますが、やっぱり首都圏にないというのは「画竜点睛を欠く」のです。これに目を入れないといけない。それがやっとできたということで、本当に我々としては、やっと目を入れられたという思いです。


「チャイナ・プラス・ワン」は必要ない

――今、「チャイナ・プラス・ワン」と言われていますが、感じられる部分はありますか?


当然、そういう言葉があって、みなさんもそういう意識があるのは、やはり中国にどういった技術があるのだろうか、中国は大事だけれども、リスクがあるかもしれない。そこで危険があった時のための安全策で「プラス・ワン」を考えるのです。「プラス・ワン」の候補と言えば、ベトナムがあります。ですが、実際には、中国は次第にそういったリスクも薄まっているという印象もありますし、経済の安定から考えると、中国の方が安定性を増しているので、「プラス・ワン」と言いながらも「プラス・ワン」をあまり考えなくなってきているような現実になってきています。それだけ中国が整備されてきているということなのかもしれません。


――中国の経済は安定してきてはいますが、株価の下落などを見ると、日本のバブル期と似ている部分もありますね。


そうですね。ただ、やはり日本のバブルの時とは問題が違います。日本のバブルは経済が成熟してしまった段階で起きているのです。一方、中国は、経済的には青年なのです。そういった意味で、やはり中国には色々な問題があったにせよ、成長率は今まで2桁でした。それが、減速するにしろ、8%や9%、あるいは10%に近い数字をまだ出せる力がある。これは一言で語れないものがあります。中国を平均値で語るのは簡単ですが、地域的な成長率の差は大きいからです。高い成長率の所が少し下がっても、今度は他の地域が上がり始めます。それが、また経済を支えていくのです。中国は大きいですから、格差が縮小していくのであれば、次に成長するベルトゾーンがあるはずでしょう。東北地区や西部などがそれに当たります。ですから、上手くバランスをとりながら成長を続けていけばいいのだと思います。


インタビュアー:『月刊中国NEWS』 編集長 張一帆


『月刊中国NEWS』 09年1月号掲載